日本中に残された海にまつわる民話を発掘し、その民話のストーリーとその民話に込められた「想い」「警鐘」「教訓」を、親しみやすいアニメーションとして映像化する「海ノ民話のまちプロジェクト」。このプロジェクトの一環として、魚津市に伝わる民話をもとに製作されたアニメ「錨の溝」が完成。2月22日(月)「海ノ民話のまちプロジェクト」実行委員会より、認定委員長(アニメ監督)の沼田 心之介氏、ディレクターの柴田 英知氏が、魚津市の村椿晃市長を表敬訪問し、完成したアニメのお披露目が行われました。アニメ「錨の溝」は、約5分半。「嵐の巻」「婚礼の巻」2つの話を組合せた作品となっています。魚津市の村椿市長は、「海にまつわる宝が魚津市に沢山あり、子ども達に知ってもらい、海を守ろうという気持ちを育ててほしい」とコメント。
3月5日(金)経田小学校で、6年生の児童35名を対象に上映会が行われました。観賞した児童からは「米を大切にする心が伝わった」、「生き物を大切にする気持ちの大切さが理解できた」、「自分たちの住んでいる経田の地域が歴史と深い関わりがあることがわかった」などの声が聞かれました。上映会終了後には、元教員らで構成される学習指導ボランティア4人が参加して、ボランティアから地域に伝わる民話「錨の溝」についての地理的・歴史的背景についての学習会が行われました。「錨の溝」と言われる現在の場所、その地に伝わる元々の民話などについて説明を受けました。
【富山県県魚津市に伝わる民話「錨の溝(いかりのどぶ)」あらすじ】
「嵐の巻」
かつて有磯海(ありそうみ)と言われた富山湾の海底には深い谷が刻まれ、どこまで続くのかわからないほど深い。この海底の谷には杉林(埋没林)があり、主が棲んでいるという。ある日、猟師の定置網に角の生えた小さな海蛇がかかった。猟師達はこの珍しい海蛇を面白がってからかい、こんなもんは食えないと言って海へ放り投げた。すると突然強風が吹き荒れ、船が暴れ出した。船は錨鎖(びょうさ)に振り回されて今にも沈みそうになった。すると水煙が上がり竜神が姿を表した。我が子を笑い物にしたと言い、カンカンに怒っている。さっきの海蛇は竜神の子供だったのだ。猟師達が必死に謝ると、錨の鎖が切れて、錨は深い海の底に沈み、船は静まった、猟師達がほっと胸をなで下ろすと、沖に幻想的な蜃気楼が見えた。人々は、この港を錨の龍が住む「錨の溝」と呼ぶようになった。
「婚礼の巻」
魚津は江戸時代以来、越中東部の中心地として栄えていた。ここに彦左衛門という金持ちがいた。ある日、彦左衛門の元を若侍が訪ねてきた。侍は「実は自分は錨の溝の主の皇子だ」という。彦左衛門は驚いた。錨の溝の主の若君は「黒部川流域の愛本の主の娘と結婚することになったので、祝いに使う道具を貸してほしい」と言った。彦左衛門は黒部川の主を怒らせたら 村々が水没する恐ろしい洪水が起きてしまう。これは大変だと思い、見事な魚津漆器の婚礼の道具を一式貸すことにした。しばらく経った頃、錨の溝の主の使いが道具を返しに来た。しかし、器をよく見ると、米が3粒残っていた。庄屋は汚れたままにすれば道具が傷んでしまうと言って、器をきれいに洗わせた。その夜、夢に溝の主が現れ「なぜ米を捨てた。尊い米を捨てた柄、お前たちはいつか米で苦労するだろう。だが、この海をいつまでも大切にすれば、海の恵みに困ることはないだろう」と言った。