お知らせ
2024.01.05

富山県氷見在住の魚料理研究家「昆布」による連載コラムvol.31

【一つ一つ前に~能登半島地震・氷見市レポート】

この度の令和6年能登半島地震により、犠牲となられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
毎月コラムを執筆いただいている、氷見市在住の魚料理研究家・昆布さんがこの状況のさなか、地震の発生から今にいたる心境をつづってくれました。
まだまだ余震が続いている中ではありますが、海と日本プロジェクトin富山県として、何ができるのか考えながら地域に寄り添った活動を展開し、被災地の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

事務局


家族と共に被災。地震の後のテレビで津波がくるとの叫びを耳にした際、大袈裟ではなく、死ぬかと思った。海の近くに住むことの怖さを始めて感じた。
避難所に逃げ込んだものの、マットや食料の取り合いがあったり、多少の混乱があった。

翌日津波注意報の解除と共に帰宅。幸い家は無事だったが、周囲でも傾いた家が見受けられた。

断水は帰宅翌日に解除。それまでは井戸水を使っていた。市北側を中心に断水が続いているエリアが未だある。

避難所から帰宅後、温かいご飯、初めて飲んだビール、初めて淹れたコーヒーの味が忘れられない。日常を取り戻す儀式のようだった。

民宿あおまさでの温泉・食事の無理提供のお手伝いをした。あおまささんの行動に救われた人が数多くいた。夕方に現れたご家族が「これが今日の一食目」と言っていた姿が印象的だった。

道路は隆起・液状化。特に最近工事した場所や、元々海だった埋立地エリアは深刻で、家屋の傾きなどが多々発生。

一つ一つ前に

当店も傾き、後ろの家屋ともたれかかるような状況。平衡感覚が狂うので、店の再開は厳しいか。
市役所職員による建物の危険度判定が開始。それをもとに復旧のプランを練る。

漁港も岸壁が崩れ、漁港内もフォークリフトが通行不可なエリアもあるとのこと。
5日は船が出たものの、網の修復がメイン。安全な漁港運営ができるのか、流通がどうなのか、漁師の皆さんの生活はどうなのか、魚はどうなっているのか。未だ不明なことが多く魚のまちの平常化はまだまだ時間がかかる。

ヤマトの荷物集荷・配達は現在停止。物資の受け入れが難しい状況だが、流通は回復し氷見市内のスーパー・コンビニなどは在庫が安定してきており、生鮮品や、飲料水やおにぎりなども買える。
会社勤めの方は4日から勤務再開。日常に戻る雰囲気と荒れた町の状況に若干の違和感を覚える。
輪島や七尾、珠洲などに比べればまだ被害は少ないが、その分何か支援すべきなのではないかという想いに駆られる。ただ年末からの疲れも相まって、確実に疲労は溜まっている。

これから先の不安と折り合いをつけながら、一つ一つ前に進んでいくしかない。

魚料理研究家【昆布】

東京都葛飾区出身、1993年生まれ。
大学卒業後、大手スーパーの鮮魚部に勤務。
旅行で訪れた富山県氷見のあまりにも新鮮な魚に一目ぼれし、2019年10月氷見へ移住。
2023年8月には、魚料理専門店「サカナとサウナ HOTEL&DINER」を開店。
地元の魚屋・漁師・料理人と語らいながら、日々魚料理の新たな可能性を素材と調理法の両面から研究中。

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