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富山県氷見在住の魚料理研究家「昆布」による連載コラムvol.29

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「今日の立山見ました!?」

 

先日新湊のイベントで出店をしていた際、買いに来てくれた顔なじみのお客さんが興奮交じりに尋ねてくれました。
その日は夜も明けぬ午前3時から、100食分のサンドイッチとカレーを一人で必死で作るところからスタート。7時頃には朝日から目を背けながら何とか新湊の会場まで運転し、そのまま必死に売り込みをしていたため、尋ねていただいた時点ではその日の立山の素晴らしさに全く気づいていませんでした。

移住するきっかけ

  1. 輪郭を帯びた立山
  2. 夕焼けに染まる立山

眠い目をこすりながら6時間かけてなんとかカレーとサンドイッチを全量売り切ることができた後、朦朧としながらもなんとか搬出のために車へと戻っていた道すがら、正面に信じられないほどくっきりとした輪郭を帯びた立山が現れました。
頂上付近には夏の間には見られなかった冠雪があり、その白さが快晴の空と山肌の青を際立たす素晴らしい景色。

それまでなかなか開かなかった目がその景色によって急に冴え始めた時にふと、僕が氷見に移住を決めた理由の一つは、この立山の美しさだったことを思い出しました。

移住からさかのぼること半年、当時の僕は仕事がうまくいかず心身ともに疲れ切っていました。
静かな場所に行ってゆっくり休もうと思い訪れた氷見で、幸運なことに夕焼けに染まる真っ赤な立山を見ることができた時、全ての疲れやストレスがが洗い流されたように感じたのでした。
あの立山をもう一度見たいと思ってその後何度か通っているうちに、様々な氷見の魅力に気づき移住を決心した、というわけなのです。

こんな動機での移住は僕だけかと思いきや、どうやらこれは富山移住あるあるだそうで。
先日ある情報誌の編集者さんとお話していた際、僕も出させていただいた富山移住者の紹介コーナーが話題に上がりました。
最近そのコーナーが終了してしまったのですが、その理由は移住者の移住理由が似通っていてあまり目新しい話題が無くなってきたからだそうで。
そう、その理由こそ「立山の美しさに心を打たれたから」。

移住には住環境や補助制度など様々な条件を鑑みて決断するケースが多いように思われますが、実際にはもっと感情的な理由が大きいのかもしれませんね。
皆さん、エモ移住、おすすめですよ。

サカナのサンドイッチ

さて、飲食店である当店にとって、これからは冒頭お話ししたようなイベント出店が多くなる季節。
食品にとって危険な暑さが和らぎ、比較的安全に持ち運び・販売ができるためです。

当店で最も人気のある出店メニューといえば、サカナのサンドイッチ。
用意するものは、定番のカレー風味のスパイシーサバサンドをはじめ、味噌漬けや照り焼きを挟む和風サンド、ジェノベーゼでマリネしたイカのイタリアンサンドなど様々。

味付けの豊富さやサンドイッチならではの手軽さから、普段は魚を食べないお子さんも美味しいと食べてくれることがあり、その点は魚料理研究家冥利に尽きるところ。
その時期に獲れる魚介類を様々な調味料で味付けし、旬の野菜と共にパンに挟むので、季節によって種類は変化します。
今が旬のサンド、なんて大袈裟に宣伝しても悪くないかもしれませんね(?)。

鰤に負けず劣らず

  1. 氷見漁港
  2. カマスサワラ
  3. 昆布締め

最後に富山湾のお魚の話を。
11月ともなれば富山湾も冬めいて、少しづつ寒ぶりの気配が感じられそうな時期なのですが、今年は幼魚や若魚すら漁獲が乏しく、先行きが不安なところ。

反対に鰤が獲れすぎて困っているのが、北海道。
北海道で鮭用に敷設されている定置網に、今鰤が大量にかかっているそうで。
さぞ道民の皆さまは喜ばしいかと思いきや、もともとの狙いである鮭を鰤が追い出してしまっていることからあまり評判はよくないのだとか。
なんて贅沢な悩みなのでしょう。それなら少しこちらに分けてほしい…。

なんてただただ嘆いてばかりもいられないので、今の氷見漁港で漁獲されている鰤に負けず劣らずの脂乗りの魚をご紹介。

それこそ、「カマスサワラ」。
氷見ではテッポウサワラと呼ばれている魚で、見た目はまさにカマスとサワラの中間。
カマスの流線型の形は残しつつも、体表の色や身質はサワラに近い魚です。
サワラが大きくとも10㎏ほどであるのに対し、カマスサワラは大きいものでは30kgになるものもあります。
氷見漁港で近頃漁獲されているのはその大きなサイズで、連日20〜30kgのカマスサワラが水揚げされています。

僕自身先日婚活イベントにて解体ショーを行った際(少し不思議な組み合わせだとは思いますが笑)、持って行ったのは15㎏のカマスサワラ。捌き始めたときにまずはその腹身の太さに驚き、そして捌いている手がじょじょに脂で輝き始めたときに、この魚の脂乗りを確信しました。
15㎏でこれなら、30kgのものはどんな脂を蓄えているのでしょうか。大袈裟ではなく、鰤を超える脂乗りなのかもしれません。

カマスサワラの具体的な調理法としては、少し水分量が多い魚であることから、塩を振って水分を少し取り除いてから調理するのがお勧めです。
また昆布締めも非常に美味。昆布が身の水分を吸収しながら旨味をプラスするので、まさに一石二鳥。
腹身を皮つきで昆布締めにし、1晩ほど寝かせたら昆布を外して皮目を炙って刺身に。
いやぁ想像するだけで日本酒が進む進む…。

中々スーパーでは出回らない魚ではありますが、見かけたらぜひ手に取ってみてくださいね。
豊かな脂と身の旨さに、鰤を望む声も少しは小さくなる…かもね。

魚料理研究家【昆布】

東京都葛飾区出身、1993年生まれ。
大学卒業後、大手スーパーの鮮魚部に勤務。
旅行で訪れた富山県氷見のあまりにも新鮮な魚に一目ぼれし、2019年10月氷見へ移住。
2023年8月には、魚料理専門店「サカナとサウナ HOTEL&DINER」を開店。
地元の魚屋・漁師・料理人と語らいながら、日々魚料理の新たな可能性を素材と調理法の両面から研究中。

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