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2025.10.21

【連載コラム】現役海洋大生が教える!地元富山・海遊びのすすめ

摩訶不思議な深海の世界へ…

みなさん、こんにちは!東京海洋大学の大屋進之介です!今月のコラムは、皆さん大好き深海について。深海と言えば、暗くて冷たくて…。それにダイオウイカやリュウグウノツカイなど、ヘンテコな生き物が暮らしていて…。SFのようなワクワクが止まらない世界ですよね。なんで急に深海のことを書くかって⁉ 実は富山は深海王国。深海生物や深海の漁業、食事など、深海がとっても身近な海でもあるんです。ということで今日は、摩訶不思議な深海の世界を、皆さんにちょっとだけご紹介したいと思います。

富山湾は深海王国!

はじめに深海とはどこの海のことでしょうか。一般的には、水深200m以深の海域を深海と呼んでいます。実は世界全体の海の深さの平均は、約3700mもあります。世界の海は深海だらけというわけです。世界で最も深いチャレンジャー海溝は、なんとその深さが10920m!!ちょっと想像もつきませんよね。そんな中で富山湾も相当深い海で、なんと日本で三番目に深い湾なんです!(日本三大深湾は、駿河湾、相模湾・富山湾)最も深い箇所で約1200mあります。そして富山湾の特徴はもうひとつ。大陸棚が狭く、岸近くで一気に深くなる地形をしています。そのため岸から船で10分ほど進んだだけで、真下には深海が広がっているという特徴があるんです。この特徴は後ほど紹介する富山の深海生物や、その漁業にも深く関わってくるので、覚えておいてください!さて、そんな唯一無二の富山湾には、これまた唯一無二の生き物たちが暮らしているんです。

富山湾で暮らす深海生物たち

ではここからは、富山に暮らす深海生物を7種、紹介してみたいと思います。ひとつずつ、アツい愛を語りたいところですが、コラムがとんでもない長さになってしまうので、簡単にその生き物の特徴とチャームポイントを書いていきます!詳しく知りたい方はぜひ本や水族館で!(僕に連絡して頂いても嬉しいですよ!!)

生き物の特徴とチャームポイント その1

  1. ① ホタルイカ
  2. ② シラエビ
  3. ③ ベニズワイガニ

①ホタルイカ

ホタルイカは、富山湾の水深約200m~600mに生息する小型のイカで、富山湾の神秘とも称される、富山を代表する水産物でもあります。春の夜、メスが浅い海に浮上して産卵を行います。その道中、定置網に入網して漁獲されているのです。岸近くで集団産卵するのは富山湾のみで、定置網漁業で獲れるのも富山のみの特徴です。

②シラエビ

シラエビは、シロエビとも呼ばれる深海性のエビで、水深約200m~300mほどの海底谷(海の中の溝のような海域)に暮らしています。富山湾の宝石と称され、これまた富山を代表する水産物です。新湊や岩瀬では、かけまわし漁法(中層を曳く底引き網のような漁法)でシロエビを漁獲します。海底谷が岸から近いため、漁獲後すぐに港にもどって、鮮度を保ったまま出荷できることも大きな特徴です。

③ベニズワイガニ

ベニズワイガニは、水深約550m~1050mに生息するカニで、富山湾の朝陽とも称されています。もう少し浅い海域(それでも深海)に住むズワイガニと比べて、甲羅が堅くない特徴を持ちます。富山では主にカニかご漁で漁獲され、秋から冬にかけて、最高においしいお料理を楽しむことができます。

生き物の特徴とチャームポイント その2

  1. ④ バイガイ
  2. ⑤ ザラビクニン
  3. ⑥ リュウグウノツカイ

④バイガイ

バイガイは水深約600m~1000mに生息する貝の仲間の総称で、富山の深海にはオオエッチュウバイやカガバイ、ツバイなどがいます。深い所で1100m付近にも生息しており、富山湾の中でもかなり深い海の生き物と言えます。かご漁で漁獲され、バイの煮つけは古くからの浜料理です。食卓の身近なごはんも、深海からの恵みというわけです。

⑤ザラビクニン

ザラビクニンは、水深約150m~1300mに生息するクサウオの仲間で、ピンク色でプヨプヨの体をしています。ひげのような軟条の先には、味を感知する味蕾が備わっていて、暗い深海でもエサを探せると言われています。あまり食べられる魚ではありませんが、日本海側の深海独特の進化を遂げたヘンテコな魚ですね。

⑥リュウグウノツカイ

リュウグウノツカイは、水深約200m~700mの深海に生息するザ・深海魚。富山湾でも冬から春にかけて、浅瀬まで上がってきた際に深海に戻れず、定置網に入ったり浜辺に打ち上ったりします。まだまだ謎が多い深海魚で、その一生はよくわかっていません。生きた姿が見られると、とってもとってもいいことがありそう。

生き物の特徴とチャームポイント その3

  1. ⑦ アンコウ

⑦アンコウ

アンコウは、水深約30m~500mに生息する実は!深海魚。富山湾でも深海域に暮らしていて、刺網や定置網で漁獲されます。僕たちが食べている多くがメスで、オスは小さいまま一生を終えます。あんこう鍋やあん肝など、冬のご馳走に馴染みの魚も、実は深海魚なんですね。実は深海は生活のすぐそばなんです!

深海魚・深海生物はあなたのすぐそばに…

  1. 深海魚たち
  2. 世界規模の環境問題
  3. 深海研究スーパーキッズ育成プロジェクト

ここまで、美味しい魚からヘンテコな魚まで、富山の深海生物を少し紹介してきました。この深海生物たち、なにも海に潜らなくても会うことができます。深海生物に会える場所を紹介してみようと思います。まずは、水族館やミュージアム!魚津水族館では、2階に「深海生物コーナー」があり、ビクニンやゲンゲ、カニなどを観察することができます。また春にはホタルイカも見られますね。そしてホタルイカミュージアムでは、春の時期にホタルイカの発光ショーも楽しめます!さらに忘れてはいけないのが、魚屋やスーパー。ホタルイカやシラエビ、アンコウなど美味しい深海魚を買って食べることができます。深海魚たちが、当たり前のようにお店に並んでいるのは、深海から食卓までの距離が近い、富山ならではの光景だと思います。ぜひ、見て学んで味わって、富山の深海の世界を身近に感じてほしいなと思います。

グローバルに。ローカルに。

少し真面目な話もさせてください。海洋教育を学んでいる身として、なぜ海洋教育を推進するべきかという問いのひとつの答えを、この深海で説明できると思っています。それは、世界規模の出来事(科学)と、生活と繋がる身近な自然(科学)を繋げて考えるクセをつけられるということです。山積する世界規模の環境問題も、自分に関係する自分事として捉えて、ひとりひとりが解決に向かう必要があります。でもなかなか世界のどこかで起きたお話と、今日の生活を繋げるのは難しいのもよくわかります。そこで考えやすいのが、海や深海だと僕は思っています。想像もできない世界の不思議な深海と、すぐそばにある富山湾の深海が、文字通り繋がっていて影響しあっているはずです。知らない世界と身近な世界のワクワクがリンクするのが海や深海です。世界規模のグローバルな問題も、まずは目の前のローカルな自然から考えてみる、とっても重要な学びを与えてくれると思うのです。

深海研究スーパーキッズたちの活躍を見よ!

最後に、富山みらいラボが、富山テレビと行っているプロジェクトを紹介しておしまいです。「深海研究スーパーキッズ育成プロジェクト」では、10人の選ばれしスーパーキッズたち(小中学生)が、1年を通して深海を学び、各々の興味を深堀、最後は研究発表を行います。今年は2期目で、昨年の1期生も、深海魚の生態に関する研究や、独創的な工作、絵本製作、ラーメン作りなどなど、アイデア溢れる研究発表をしてくれました。そして今年の2期生たちも、深海を学びながら、鋭意研究中です!僕もプロジェクト・シンボルとして、みんなの学びをサポートしています。彼ら彼女らの活躍は、富山テレビのニュースや番組で放送予定です!ぜひ活躍をチェックしてみてくださいね!

https://www.bbt.co.jp/shinkaikids/

(プロジェクトHPのリンクです!取り組みの詳細はこちらから!)

■かいたひと

  1. 大屋進之介

東京海洋大学博士後期課程1年。富山市出身。富山中部高校卒業後、本学に入学し海と魚の学びを続けている。専門は「海洋教育・海業」で、一般の方々に海洋や水産を効果的に啓蒙しリテラシーを高めるための研究に従事。富山を中心に各地で海洋教育の企画や運営を手掛ける。好きな魚はウマヅラハギ。好きな漁村は気仙沼。

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