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2023.06.01

富山県氷見在住の魚料理研究家「昆布」による連載コラムvol.24

洋服、鞄、棚、椅子、腕時計の革バンド、その他思い出せないほど色々。

僕が富山に移住してからというもの、次々とカビが生えてしまった品々です。冬には乾燥注意報なんてものが出る東京の出身の僕は、それまで経験してこなかったこのカビ包囲網に完全にやられてしまっています。
一年中湿気の多い富山ではこんな惨事は日常茶飯事なのですが(冬にカビるなんて考えられない!)、これからの季節は気温が上がり体感的にも更にジメジメムシムシとしてくる危険な時期。
カビ対策にも自分の体調にも注意が必要となります。

湿気の時期

そんな湿気は怖いものの、意外と梅雨時期の雨の多さは気にならないもので。なぜかというと富山は降水量も年間を通して多く、6月の降水量が他の月と比べて特別多いというわけでも無いそうなので。冬から春にかけての、青空があまりにも遠く感じる季節を乗り越えた僕らにとってはこんな雨や湿気ぐらいへっちゃら…なんて強がりで自分を鼓舞していきます。地球さん、今年の梅雨はどうぞお手柔らかに。

新生サカナとサウナ

そんな梅雨に負けてられないと意気込んで現在施工中なのが、新生「サカナとサウナ」。
元海鮮問屋の店舗に移転し、ただいま改装中との旨を先月はお伝えしました。
そしてついに、お店の更なる情報をば。

新生サカナとサウナは2階建ての施設。
1階は魚料理専門店。氷見の旬の魚と野菜を組み合わせたお料理の数々をご提供します。。
2階はサウナを中央に設置したホテル客室。こだわりのストーブとアロマを駆使したオリジナリティ溢れるサウナ室でおもてなし。
宿泊の方は2階でチェックイン後即サウナへ。水風呂で体を冷ましたら港町の景色を見ながらリラックス。陽が暮れたら1階に降りて。氷見の魚まみれコースでご夕食。グラスを傾けながらお腹いっぱいに食べて更に深いととのいまで足を踏み入れたら、2階に上がってそのままベッドにバタン。
目が覚めたら朝日を見ながらまたサウナ。チェックアウトまで心行くまで楽しんでいただければ。
お食事のみの方も大歓迎。コースもアラカルトもどちらもご注文可能です。

魚とサウナ、どちらも僕が人生をかけたくなるぐらい好きな2つの魅力をかけ合わせる夢のような施設をただいま改装中。
今は1階の工事が進み、オリジナルのカウンターとタイルをこれでもかと張り合わせた壁が出来てきました。

まるでお風呂に入っているような感覚にしたいと設計士さんに相談したところ出来上がってきたこの内装。毎日少しずつ完成していくのを見るたびにニヤニヤとワクワクが止まりません。
これからサウナや外装の工事も始まるので、湿気ごときに負けていられません。
今年の夏ごろにはオープンできるかと思いますので、そこまで(それからも!)全力で突っ走って行きます。どうぞ続報をお楽しみに。

富山といえば「昆布締め」

さて話題は変わって魚のお話。

更に魚は夏めいて、魚屋ではサヨリやメバル等の春の魚は少なくなって、トビウオやアジ、スズキなどの夏の魚が売場を占めるようになりました。夏は獲れる魚の種類が減るので、なんとか上記の夏魚をアレンジしながら様々な料理を作っていかなければなりません。なにぶん夏の魚は脂や味が薄いもので、そんな魚はスパイスやオイルを使って味に厚みを出していく調理法が一般的です。

ですがここは富山、昆布県。北前船の時代から食文化に深く根付いてきた昆布を使った、夏の魚にうってつけの調理法があるじゃないですか。
そう、「昆布締め」!
刺身や切る前のサクの状態のものを酢や酒を塗った昆布で挟み1時間~2日程寝かせる、富山では定番の調理法です。

(ちなみに、その昔僕が富山に初めて来た際、長方形の黒いものが入ったパックがスーパーの鮮魚コーナーの一角を占めている光景を見ました。不気味に思いつつも手に取ったパックには、「サス」との表示が。意味が分からず余計に怖く思えて、すぐに売場に戻してしまいました。今思えば、あれはカジキマグロ(富山弁でサス)の刺身を長方形の昆布に挟んで売っていたのだなぁと理解できますが、あの当時の自分にはとても食べられるものには見えなかったなぁ…。)

昆布締めにすると、昆布が刺身の水分を吸って身を引き締めてくれることに加え、昆布のうまみ成分(グルタミン酸)が刺身に移るため、より奥行きのある味わいになります。

夏の魚の中でも、僕が昆布締めにおすすめするのは、トビウオ。
鮮度のいいものはプリプリとした食感が特徴の魚ですが、昆布締めにするともっちりとした食感に変わり、昆布のうまみ成分も相まって非常に美味です。普通の刺身と昆布締め刺身を2点盛りにして味や食感の違いを比較しながら、冷酒でクーっといきたい…。いやぁ暑い季節も悪くないですねぇ…!

今日も気分をあげて

ジメジメムシムシする季節もやっぱり気の持ちよう(?)。
昆布締めの魚の味と一緒のように、気分も工夫次第でどうにでもなるのかしらん。じゃあ今日もなんとか気分をあげて、改装を見守りながら細々仕事をこなして、一秒でも早く昆布締めと冷酒で乾杯だ。頑張るぞ~~~!

魚料理研究家【昆布】

魚料理研究家。本名: 近森光雄、1993年東京都下町生まれ。

大学卒業後、魚屋に3年半勤務。旅行で訪れた富山県氷見のあまりにも新鮮な魚に一目ぼれし、2019年10月氷見へ移住。
地元の魚屋・漁師・料理人と語らいながら、日々魚料理の新たな可能性を素材と調理法の両面から研究中。

サウナを愛するあまり、スーパー銭湯の近くに住んでいる。

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